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「糖尿病は、血糖値が高いだけの病気」だと思っていませんか? 実は、血糖値が高い状態が続くことの本当の恐ろしさは、全身の血管が「砂糖でボロボロになる」ことにあります。
第1回では、沖縄の子どもたちが日常的に口にするパックや缶の甘い飲み物や甘いお菓子に、どれほど大量の砂糖が含まれているかをお伝えしました。 今回は、その過剰な砂糖が、子どもたちの体の中でどのように「目に見えない破壊」を進めていくのか。保健師さんの知見をもとに、その恐ろしいメカニズムを解説します。
1. 血管が「キャラメル化」する?糖化の恐怖
血液中に溢れた過剰な砂糖は、血液をドロドロにするだけではありません。 糖分は血管の壁(タンパク質)と結びつき、血管そのものを変質させてしまいます。これを専門用語で「糖化(とうか)」と呼びます。
料理で砂糖を熱すると、黒っぽく硬い「キャラメル」になりますよね。これと同じような現象が、子どもたちの血管の中でも起きているのです。 糖化した血管は、本来のしなやかさを失い、ガラス細工のように脆(もろ)く、壊れやすくなります。これが「血管が砂糖で錆びる」と言われる正体です。
2. 逃げ場のない「三大合併症」の足音
血管は、全身に酸素と栄養を運ぶインフラです。そのインフラがボロボロになれば、当然、全身の臓器が悲鳴を上げます。 特に「細い血管」が集まっている場所は、真っ先にダメージを受けます。それが、糖尿病の恐ろしい「三大合併症」です。
- し:神経障害(しんけいしょうがい) 手足の先がしびれたり、逆に痛みを感じなくなったりします。怪我をしても気づかず、最悪の場合は足が腐ってしまう「壊疽(えそ)」を招き、切断を余儀なくされることもあります。
- め:網膜症(もうまくしょう) 目の奥にある血管が破れ、視力が低下します。進行すると失明に至ることも珍しくありません。
- じ:腎症(じんしょう) 血液の汚れを濾過(ろか)する腎臓のフィルターが目詰まりを起こします。腎臓が機能しなくなれば、一生、週に数回「人工透析」という機械で血液を掃除し続けなければなりません。
これらはかつて「大人の病気」と思われていましたが、幼少期から甘いパック飲料や炭酸飲料、アイスやお菓子を過剰に摂取し続ければ、20代、30代という若さで発症するリスクが格段に高まります。
3. 「甘いもの+しょっぱいもの」が血管を追い詰める
沖縄の子どもたちの食習慣で、保健師さんが特に心配しているのが「糖分×塩分のダブルパンチ」です。 甘いソーダやパック飲料と一緒に、ポテトチップスなどのスナック菓子を食べる。この組み合わせは、血管にとって最悪の組み合わせです。
- 糖分が血管を脆(もろ)くし、
- 塩分が血圧を上げて、その脆い血管に強い圧力をかける。
これでは、まるで古びてひび割れた水道管に、高圧で水を流しているようなものです。いつ破裂してもおかしくありません。脳で起きれば脳梗塞、心臓で起きれば心筋梗塞という、命に関わる事態を引き起こします。
4. なぜ、子どもは「痛くない」のか?
糖尿病の最も厄介な点は、「痛みがないこと」です。 血管がボロボロになっていても、腎臓が壊れかけていても、初期段階では子ども自身に自覚症状は全くありません。
「元気そうに部活に行っているから大丈夫」 「学校で楽しくお菓子を食べているから問題ない」 その裏で、血管の「サビ」は1分1秒休まず進行しています。症状が出た時には、すでに「元に戻せない(不可逆な)」状態まで悪化していることが多い。それが糖尿病の「静かなる恐怖」なのです。
5. 私たちが守るべきは、子どもたちの「一生のインフラ」
子どもたちの体は、今まさに一生使い続けるインフラを作っている最中です。 その大事な工事現場に、毎日大量の砂糖という「不純物」を流し込んで良いはずがありません。
「お菓子を食べるな」「甘いものを一滴も飲むな」と極端に走る必要はありません。 しかし、親である私たちが「この一口が、この子の血管を錆びさせているかもしれない」という事実を知っているかいないかで、選ぶ飲み物、選ぶおやつの量は変わるはずです。
次回は、そんな過酷な環境で働き続け、ついには燃え尽きてしまう臓器、「膵臓(すいぞう)」と「インスリン」の切ない関係について詳しくお伝えします。
【監修:保健師からのメッセージ】
糖尿病の合併症は、発症してから数年〜十数年かけて忍び寄ります。子どもの頃の食習慣は、30歳、40歳になった時の健康状態を決定づけます。今、冷蔵庫にある飲み物を水やお茶に変える。その小さな決断が、子どもの将来の視力や、自分の足で歩ける未来を守ることにつながります。






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