第3回:膵臓(すいぞう)の悲鳴が聞こえる。一度枯渇したら戻らない「一生の注射」という現実【保健師監修】

コラム

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「疲れたから、ちょっと休ませて」 もし、体の中の臓器がそう口に出せたら・・・
子どもたちの膵臓(すいぞう)は、悲痛な叫び声を上げているかもしれません。

これまで、砂糖の摂りすぎが招く「血糖値の急上昇」と、それが全身の「血管」をボロボロにするメカニズムについてお伝えしてきました。 今回は、その過剰な砂糖を片付けるために、休みなく働き続けた臓器「膵臓」の終着駅について、保健師監修のもとお伝えします。

1. 膵臓は「壊れる」のではなく「枯渇」する

「糖尿病になる」ということは、膵臓が機械のようにポキッと折れて壊れることではありません。もっと切実な「資源の使い果たし(枯渇)」です。

膵臓の中には、血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」を作る工場があります。 本来、この工場は食事のタイミングに合わせて、決まった量のインスリンを出す「ゆとりある経営」をしています。しかし、毎日、水代わりの甘い飲み物をのんだり、お菓子やアイスが休みなく入ってくると、工場は24時間体制の超絶ブラック労働を強いられることになります。

2. 「一生の付き合い」となる、自己注射のライフスタイル

インスリンが枯渇した瞬間から、子どもたちの人生は「注射」と切り離せないものになります。 膵臓がインスリンを作れなくなった以上、外から人工的に補給し続けるしか、命を繋ぐ方法がないからです。

  • 毎食前の自己注射: 朝・昼・晩、食事を摂るたびに、自分で自分のお腹や太ももに針を刺し、インスリンを注入しなければなりません。
  • 場所を選べない戦い: 友だちとのランチ、修学旅行、部活動の合間。どんなに楽しく過ごしていても、時間になればトイレや物陰へ行き、服をめくって注射を打つ。これが日常になります。
  • 低血糖との隣り合わせ: 注射の量が多すぎれば、今度は血糖値が下がりすぎて意識を失う「低血糖」の恐怖に襲われます。常にブドウ糖を携帯し、常に自分の血糖値という「数字」に支配される生活が始まります。

3. 学校生活や将来への「重荷」

子どもにとって、この生活変化は精神的に大きな負担です。
「なんで自分だけ、みんなと同じようにジュースを飲んだり、お菓子を食べたりできないのか」 「なぜ、毎回痛い思いをして注射を打たなければならないのか」

その悩みは、学校生活だけでなく、将来の就職や結婚、キャリア形成にも影を落とすことがあります。もちろん、管理さえすれば普通の人と同じように生活できます。しかし、その「管理」という名の鎖を、一生外すことはできないのです。

4. 「痩せてきた」は、膵臓が燃え尽きたサイン

第1回でも少し触れましたが、保健師さんが最も警戒するサインの一つが、「たくさん食べているのに、急に痩せてきた」という状態です。

インスリンが枯渇すると、体は血液中の糖分をエネルギーとして使えなくなります。 すると、体は生き延びるために、自分自身の筋肉や脂肪を猛烈な勢いで燃やし始めます。 「甘いものを食べているのに痩せているから安心」ではありません。それは、膵臓が燃え尽き、体が自分を食いつぶしている、文字通りの緊急事態なのです。

5. 親として、今できる「最期の防波堤」

インスリンが枯渇するまでには、必ず「膵臓が頑張っている時間」があります。 今、お子さんが甘いものを好んで飲んでいるとしても、まだ間に合うかもしれません。 膵臓が「もう無理だ」と匙を投げる前に、その労働環境を改善してあげられるのは、周りにいる大人だけです。

「たかが飲み物」 その考えが、子どもに一生の注射を背負わせるか、健やかな未来を贈るかの分かれ道になります。

次回は、いよいよ解決編です。 「甘いものがやめられない」という子どもたちの味覚を、どのようにして「砂糖依存」から救い出すのか。保健師さんも推奨する、無理のない「スライド式・味覚リセット術」を具体的にお伝えします。


【監修:保健師からのメッセージ】

インスリン注射は、医療の進歩で使いやすくはなっています。しかし、「打たなくて済むなら、打たないに越したことはない」のが現場の本音です。膵臓は、沈黙の臓器です。文句も言わず働き続け、力尽きる瞬間にだけ牙を剥きます。その悲鳴が聞こえる前に、まずは「飲み物の選び方」から見直していきましょう。

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投稿者プロフィール

元塾長カズ
元塾長カズ
三児の父

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毎日アプリで指しているのに。
一向に強くならないのが悩み(笑)。

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