子どもが学校でいじめにあって不登校になる。それは、ただ「勉強が遅れる」といった問題だけではありません。自分の居場所を奪われ、大人を信じられなくなった子どもにとって、世界は敵だらけの恐ろしい場所に変わってしまいます。
しかし、学校以外の場所に一歩踏み出したことで、息子は少しずつ、本来の「明るくて正義感が強く、優しい」自分を取り戻し始めました。
1. 「学校より1億倍楽しい」という言葉
2月中旬から通い始めた「しののめ教室」。そこは、息子にとっての「安全基地」でした。 初めは緊張していた息子でしたが、そこでの活動は、彼の好奇心を刺激するものばかりでした。
- 畑での収穫: 泥だらけになりながらジャガイモを掘り出す。
- おやつ作り: 仲間と一緒にサーターアンダギーやかりんとうを作る。
- スポーツ: 中学生のお兄さんとバドミントンのラリーを続け、勝つ喜びを知る。
「今日はカレーパーティーの買い出しに行ったよ」「鶏肉をカットしたんだ」。帰宅後の息子の口からは、学校に通っていた頃には消えていた「今日あった出来事」が溢れ出すようになりました。
ある日、息子は晴れやかな顔でこう言いました。 「学校より、しののめのほうが1億倍楽しい」 その言葉は、親である私にとっても、救いの響きでした。
2. 言葉のいらない癒やし。ヤギと犬との触れ合い
しののめ教室の近くには、ヤギ小屋や犬がいました。息子は毎日のように彼らに会いに行きました。
最初は吠えられて驚いていた犬も、息子がおやつをあげ、優しく接するうちに、尻尾を振って喜ぶようになりました。黒ヤギが息子の手から直接草を食べてくれたとき、息子は飛び上がって喜びました。
動物たちは、嘘をつきません。 裏切ることも、事実を捻じ曲げることも、責任を逃れることもしない。 言葉を使わずに「そこにいていいんだよ」と受け入れてくれる動物たちの存在は、人間不信に陥っていた息子の心にとって、どんなカウンセリングよりも効果的な「薬」となったのです。
3. 本来の「優しさ」が息を吹き返す
心が安定してくると、息子が本来持っていた「気が利いて周りを助ける」性格が、再び顔を出し始めました。
ある日の下校中、荷物を両手いっぱいに抱えたおばあさんを見かけると、息子は迷わず駆け寄り、「荷物持ちますよ」と声をかけました。おばあさんの家の近くまで荷物を運び、お礼にミニトマトをもらって帰ってきた息子。
「いいことをした」と誇らしげに話すその姿は、1年生の頃から先生方に「クラスに一人は欲しい」と言わしめた、あの頃の息子のままでした。
4. 飼育委員会への復帰。動物への愛が繋いだ学校との糸
学校への不信感は依然として強かったものの、息子は一つだけ、自分から「学校へ行く」と言った活動がありました。それが、「飼育委員会」でした。
大好きな動物たちの世話をするためなら、あんなに怖い場所だった学校へも、朝の短時間だけなら行ける。 親友のIくん、そしてOくんやKくんといった仲間たちが、プールの下のピロティで息子が来るのを待っていてくれました。
「委員会、一緒にやろうぜ」 その純粋な友情が、学校と息子を繋ぎ止める、細いけれど強靭な糸になっていました。
しののめ教室での「再生」は、単なる逃げ場ではありませんでした。 それは、傷ついた羽を休め、再び外の世界へと飛び立つための「エネルギーを蓄える場所」だったのです。
投稿者プロフィール
最新の投稿
カテゴリーなし2026年5月13日【実録】最終回:未来へ。9%の勇気が100%の笑顔に戻る日まで
いじめ・不登校2026年5月13日【実録】第7回:本当の絆。息子を一人にしなかった友だちと「9%の勇気」
カテゴリーなし2026年5月13日【実録】第6回:動物たちが癒やしてくれた心。「しののめ教室」で見せた本来の笑顔
いじめ・不登校2026年5月13日【実録】第5回:学校の外で見つけた光。病院の診断と「しののめ教室」への第一歩



コメント